II-27-7. システム資源のトレードオフを考慮したコスト低減

組み込みシステムにおける限られたシステム資源によるトレードオフを考慮した上でのコスト低減策について、そのポイントを示す。ライセンシングコストを削減するOSSの利用やその限界、組み込みシステムの特殊なハードウェアとそれに対応するOSSのデバイスドライバ不足など、各種の課題を示す。

【学習の要点】

* 組み込みシステムにおいても、限られた資源や数々の制約のなかで、OSSを利用することで開発コストを低減することができる。

* 低価格かつ大量に販売するような組み込み製品の場合、ライセンスコスト削減の効果は大きい。

* コスト削減のためにOSSを利用しようとしてもうまくいかない場合もある。とくに特殊なハードウェアに対するOSSの対応状況は課題のひとつである。

図II-27-7. ライセンスコスト削減による低コスト化の実現

【解説】

1) OSSの利用によるコスト低減

コスト削減はOSSの利用に対する大きな理由のひとつである。

* ライセンスコスト削減以外のOSS利用によるコスト削減効果

OSSにより、既存のソフトウェアを流用することで開発コストそのものを抑えることができる。また当該組み込みシステムのハードウェアに特化したチューニングを行うことで最適化が可能になり、結果としてハードウェアのコストも下げることが可能となる場合がある。

2) ライセンスコスト圧縮の必要性

消費者向けの組み込み機器製品は常に価格競争にさらされている。したがって組み込みシステムであることの制約に加えて開発コストや製造コストにも多くの資金を注ぎ込むことができないという制約を抱えている。

* ライセンスコストの控除

販売価格に制約が課されている組み込み製品の場合は、ソフトウェアのライセンスコストを無視することができない。全体構成のうちソフトウェアの位置付けが大きいシステムの場合、ソフトウェアのライセンスコストが製造原価の大きな比率を占めるようになるケースもある。この現象はとくに低価格で大量の製品を販売することで利益を稼ぐ小型の組み込み機器で顕著である。

* 基本ソフトウェアのライセンスコスト

商用の基本ソフトウェアに関するライセンスコストは製造原価をかさ上げする要因のひとつとして取り上げられることも多い。そのような場合、組み込みLinuxやTOPPERS等のOSSによる基本ソフトウェアを採用することでライセンスコストを排除することが可能である。

3) OSS利用時の問題点と対策

組み込みシステムでは、特殊なハードウェアや、あまり一般的ではない入出力デバイスを利用することもある。OSSの開発モデルを考えると、そのような機器への対応やマイナーなデバイスドライバの実装はされにくい。したがって、コスト削減のためにOSSを利用できない場合もある。

* 標準化対応のハードウェアを利用

ハードウェア設計の際に、できるだけ標準的なハードウェアコンポーネントを利用したり、標準的なプロトコルに対応した設計を行ったりという工夫を加える。標準的なプロトコルに対応していれば、標準化されたOSSのデバイスドライバがそのまま動作する可能性がある。

* ハードウェア情報のオープン化

特許で知財を守るなどの対策をとった後に、ハードウェア情報を公開することで対応するOSSの開発を期待する戦略もある。またIBMがPC互換機の普及戦略でとったように、ビジネス上の観点からハードウェア情報を公開する戦略もある。

* 組み込み機器用SDK(Software Development Kit)

とくにプログラマブルな情報機器といった組み込み機器においては、その機器で動作するソフトウェアを開発するためのSDKを用意してOSSとして提供することも効果的である。Googleが提供しているAndroidのように、組み込みLinuxをベースとすることで開発者が参入しやすいコミュニティを形成することもできる。

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