II-2-1. ライセンスの伝搬性

GPLでは、派生物のライセンスもGPLにしなければならないとされている。これはライセンスの伝搬性と呼ばれている。ここでは、そもそも伝搬性とは何か、なぜライセンスの伝搬性が必要になるのか、ライセンスの伝搬性に基づくビジネス上のリスク要因は何かといった話題に触れる。

【学習の要点】

* GPLを採用したソフトウェアでは、そのソフトウェアの派生物もGPLとしなければならないと定められる。

* 派生物とは、ソースコードそのものの改変物だけでなく、ソフトウェアをリンクしたものや、ソフトウェアの依存性を持つ成果物のことをいう。

* GPLの派生物がGPLでならなければならない理由は、GPLはコピーレフトの考え方を具現化したものだからである。GPLによりソフトウェアの自由が保障される。

* それゆえにこの現象は「伝搬性」と呼ばれ、ビジネス上のリスクとも考えられている。ビジネスを行う際にクローズなソースと混在できない点が最大のリスクである。

図II-2-1. GPLの伝搬性 (派生物の定義)

【解説】

1) GPLの特徴

ソフトウェア開発の自由を保障することを目的として編み出されたコピーレフトの概念を具体化するライセンスがGNU GPL (General Public License)である。「誰でもソフトウェアを研究して修正し、さらにそのうえで改良したソフトウェアを発表して再配布することができること」を保障するために、GPLでは上記の内容のうち前者の部分をライセンス条項で保障するだけでなく、さらにその派生物もGPLとすることを要求することによって後者の部分を保障するという仕組みになっている。これをライセンスの伝搬性という。

* 伝搬性のリスク

GPLの伝搬性は、OSSの根幹である「誰でもソースコードにアクセスできて改良することができ、さらにその改良が再配布を通じて世の中に広がっていくこと」という概念を実現するために必須の制限である。その一方で、ソースコードを秘匿したい商用ソフトウェア製品と対立する概念でもある。したがってGPLで配布されているソフトウェアを商用ソフトウェアで利用する際には、その利用方法がGPL違反とならないか十分に検討しなければならない。

2) 派生物と利用者の定義

* 依存関係の形式による定義

伝搬性の範囲を考えるうえでは、新しく派生するソフトウェアと元となるソフトウェアの依存関係やエンドユーザの利用形態が鍵を握る。

- ソースコードの再利用

GPLのもとで配布されるOSSのソースコードを直接書き換えて作成した新しいソフトウェアは、GPLソフトウェアの派生物として、エンドユーザにGPLでライセンスしなければならない。すなわち、利用者はソースコードへアクセスする権利を持つ。

- ライブラリとのリンクによる利用

GPLとして提供されているソフトウェアライブラリをリンクして新たなソフトウェアを作成する場合には注意が必要である。静的リンクは派生物としてみなす一方で動的リンクは派生物とみなさないという考え方がある。ただし、同一プロセスで動作するものは動的リンクでも派生物であると主張する説もある。

- ネットワーク経由による利用

GPLで提供されているOSSを改変してネットワークサービスを提供する場合、ソースコードへアクセスする権利を持つ利用者とはそのソフトウェアを実行するユーザのことをいう。そのサービスをネットワーク経由で利用するエンドユーザは、ソースコードへアクセスする権利を持つ利用者には該当しない。ただしそれらのエンドユーザにもソースコードへアクセスする権利を与えるためのライセンスが、GNU AGPL (GNU Affero General Public License)として提唱されており、AGPLを利用する際には更なる注意が必要である。

* 依存関係の考え方に関するポイント

あるソフトウェアがGPLの派生物であるか否かの判定基準として、そのソフトウェアが元となるソフトウェアと明確に切り分けられるかどうかという指標がある。すなわち、依存関係に明確なインタフェースが定義されており、新しいソフトウェアが依存するGPLソフトウェアがGPLで提供されない別のソフトウェアに置き換え可能であれば、それは既に派生物ではないと判断してよい。

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